Special Program:ALBUM「エミールの庭」レヴュー Conversation Piece 白いマドリガル

NAME 山梨 鐐平 / Ryohei Yamanashi
BIRTHDAY 1952年11月25 日
BLOOD O
HOMETOWN 静岡県静岡市
HISTORY シンガーソングライター。1979年、バンド「Do!」結成。クラウンから「Do it敦煌」でデビューし、シングル6枚、アルバム2枚をリリース。'81年解散し、ソロ活動へ。ソロ・アーティストとしてはシングル7枚、アルバム14枚をリリース。その他、CM曲やTV番組テーマ曲、他アーティストへの曲提供等多数。


山梨鐐平の音楽をたとえるなら、古き良き、しかも味わい深いヨーロッパ映画。
力ではなく、“味”で強烈な印象を与え、聴く者を魅了する、大人の余裕と色気が漂う音楽である。

作品は、メンバーが一同に会し、ライブのごとく一度で録音する、というのが音楽へのこだわりの一つ。「音楽に嘘をつかない」という潔癖さが、山梨鐐平の“歌世界”を聴く者の心に素直に沁み入らせるのである。

山梨鐐平の音楽に浸っていると、今度は音楽に触れる《場》にこだわりたくなる。
いわゆるマイクロフォン、スピーカー等を一切通さない[東京オペラシティー3F・近江楽堂]で聴く山梨鐐平の音楽は、まさに音楽のあるべき姿である。クリスマス時期にコンサートを行ない、大盛況を得ている[キリスト品川教会グローリア・チャペル]、そして[東京都庭園美術館 新館大ホール]のステージも恒例になりつつある。また燕尾服でステージに立つ山梨鐐平には、「音楽」もっと言えば「人」に対する姿勢そのものを感じる。

“大人の音楽”として受け入れられている理由は、ベテランの重厚さだけでなく、独自の美学を追求したゆえ、滲み出る世界観があるから。
そして、“こだわる”ことや“つきつめる”ことを美徳としない風潮がある現在、ここまで自身の芸術性の表現に尽力する音楽家は希有であり、そこから生まれる音楽に人は魅せられ、引き込まれていくからであろう。

最新のオリジナルアルバムは、2008年12月1日発売の『あの日、晴れた日に』(COME TRUE RECORDS)。
そして、ベストアルバム『山梨鐐平の世界』(COME TRUE RECORDS)が絶賛発売中である。

その歌声を耳にした時、感情が刺激され、忘れ去った記憶がよみがえる。
あの日確かに見て心にとどめたものの、移ろう現実の中でなくした風景。
風景なら、まだいい。心の放物線がかつて交わった大切な人が浮かんだ時には、
熱い恋や悔いても悔いたりない思いがわきあがり、いたたまれなくなる。
映画のワンシーンのような歌詞は、現実よりもリアルな絵空事があることを伝える。
叙情性に彩られた旋律は、聴き手の感情を揺さぶり、音楽の力を教えてくれる。
似たような曲は、今の音楽界を見まわしても、どこにもない。
ある意味、わがままに自分の世界を押しとおす。
聴き手におもねる音楽家が多いなか、そんな発想は浮かびさえしない。
孤高という言葉がこれほど似合う音楽家もいない。
繊細で優美だが、ある面では恐ろしくりりしく、そして誠実。
すべては中途半端で突き詰めることが美徳ではなくなった21世紀の日本。
ここまで自分の歌世界を貫く音楽家に出会えたことを喜びたい。

大野宏

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